一生懸命に説明しているのに、
なぜか相手に理解してもらえない。

「ちゃんと説明したはずなのに」
「どうして分かってくれないんだ」

そんな経験はありませんか?

私も長い間、人間関係に悩み、
人から理解されない苦しさを
感じながら生きてきました。

しかし、当時の私は、
自分の話し方に問題があるとは
一度も考えませんでした。

そんな私が40代後半になって、
ある出来事をきっかけに、
自分の話し方を疑うように
なったのです。

自分では伝えたつもりでも、相手には伝わっていないことがある。

しかも、本人はそのことに
気づいていない場合がある。

今回は、何気ない会話から
自分の問題に気づいた私が、
その後どのように行動したのかを
お話ししたいと思います。

自分の話し方を疑ったことがなかった

私は長年、人間関係に
苦しんできました。

自分の気持ちを伝えても、
なかなか理解してもらえない。

どうして自分の言いたいことが
分かってもらえないのだろう。

そんな思いを抱えながらも、
自分の話し方を振り返ることは
ありませんでした。

50歳を迎える少し前のことです。

人生を変えたいと思っていた私は、
偶然立ち寄った本屋で、
コピーライティングの専門書に
出会いました。

コピーライティングとは、
言葉を使って相手に情報を伝え、
行動につなげる文章技術です。

それまで私は、言葉について
深く考えたことがありませんでした。

しかし、その本との出会いから、
言葉が人の気持ちや行動に
働きかけることを知りました。

そして、少しずつ言葉に
興味を持ち始めたのです。

そんな頃、ある出来事がありました。

コンビニの喫煙所で耳にした会話

いつものようにコンビニで
買い物を済ませた私は、
喫煙所でタバコを吸っていました。

すると、近くにいた若者たちの
会話が聞こえてきました。

「先輩、あのお店って
どこにあるんすか?」

「ああ、あの店はな、
ここをばぁっと行って、
あの信号をこっち。
またばぁっと行って、
こっち側にあるよ!」

私はその説明を聞きながら、
ふと疑問に思いました。

「それで本当に、相手に道順が伝わるのだろうか?」

「ばぁっと行って」と言われても、
どれくらい進めばいいのか
分かりません。

「あの信号をこっち」と言われても、
どの信号なのか分かりません。

若者たちは、その後も
会話を続けていました。

「ばぁっと」「チャチャッと」

そんな曖昧な言葉が、
次々と耳に入ってきたのです。

そのとき私は、あることに
気づいてしまいました。

自分も、まったく同じような話し方をしていた。

40代後半で気づいた自分の問題

相手に伝えようとして、
本人は一生懸命に説明している。

そして、相手に伝わっていると
本気で思っている。

しかし、聞いている相手には、
必要な情報が届いていない
かもしれない。

それまでの私も、
同じだったのではないか。

そう思った瞬間、
大きなショックを受けました。

40代後半にもなって、
こんな大切なことに
気づいていなかったのか。

自分の普段の話し方が、
これまでの人間関係を
悪くしていたのではないか。

そんな考えが頭を離れず、
私はひどく落ち込みました。

その日は重い気持ちのまま、
家路についたのです。

人と話すことが怖くなった

自分の問題に気づいたからといって、
すぐに解決できるわけでは
ありませんでした。

むしろ、私は以前よりも
人と話すことが怖くなりました。

自分では普通に説明している
つもりでも、相手には
伝わっていないかもしれない。

また曖昧な言葉を使って、
相手を困らせてしまうのでは
ないだろうか。

何十年も当たり前のように
使ってきた言葉です。

どうすれば直せるのか、
まったく分かりませんでした。

しばらくの間、
人と話すことが恐怖でした。

私が始めたのは、人の話し言葉に耳を傾けること

あの頃の私は、今振り返ると
とても必死だったと思います。

何とか自分の話し方を
変えたかったのです。

そこで私が意識したのは、
人の話し言葉に耳を傾けることでした。

人は普段、どのような言葉で
会話をしているのだろう。

どのような説明なら、
相手に伝わりやすいのだろう。

そんなことを意識しながら、
人の言葉を聞くようになりました。

そして、自分自身も
曖昧な言葉をできるだけ
口にしないようにしました。

「ばぁっと」「チャチャッと」

こうした言葉に頼らず、
相手が理解できるように
具体的に説明する。

もちろん、長年の話し方が
簡単に変わるわけではありません。

毎日の会話の中で、
少しずつ意識する。

その繰り返しでした。

ある日、職場の同僚との会話に変化が

どれくらいの期間、
そんな毎日を続けたのか。

今では、はっきりと
思い出せません。

ただ、ある日、
一つの変化に気づきました。

職場の同僚が、以前よりも
よく話しかけてくるように
なったのです。

なぜだったのでしょうか。

私の話し方が変わったからなのか。

お互いに理解しやすい言葉で
会話できるようになったからなのか。

本当の理由は分かりません。

それでも、以前とは違う
変化を感じたことは確かでした。

そして私は、この経験から
ますます言葉に興味を
持つようになったのです。

なぜ一生懸命な説明が伝わらないのか

今、あの若者たちの会話を
振り返ると、一つの問題が
見えてきます。

それは、自分が知っていることを、相手も知っていると思い込んでしまうことです。

自分の頭の中の景色は相手には見えない

例えば、よく知っている道なら、
「あの信号を右」と言われても、
場所を想像できるかもしれません。

しかし、初めて訪れる人には、
どの信号なのか分かりません。

説明する本人の頭の中には、
目的地までの景色があります。

でも、聞いている相手には
その景色が見えていないのです。

これは仕事の説明でも、
家族や友人との会話でも
起こり得ることです。

自分にとって当たり前のことが、
相手にとっても当たり前とは
限りません。

ただし、話が伝わらない原因が
いつも話し手にあるとは
限らないと思います。

相手の知識や状況、
お互いの気持ちなども
関係しているでしょう。

だからこそ、相手を責める前に、
自分の言葉にも目を向ける。

そんな考え方が大切なのでは
ないでしょうか。

相手に伝わる話し方のためにできること

私の経験から、日常で
意識できることを紹介します。

① 曖昧な言葉を具体的にする

「あれ」「そこ」「適当に」

こうした言葉だけでは、
相手が理解できない場合も
あります。

例えば、道案内なら、
「ばぁっと進んで右」よりも、
「300メートル先の信号を右」
と説明する方が具体的です。

相手が判断できる情報を
言葉にしてみることです。

② 相手が何を知っているか考える

自分には分かる説明でも、
相手には分からないことが
あります。

説明する前に、
「この人はどこまで
知っているのだろう?」

と考えてみる。

それだけでも、必要な情報に
気づけるかもしれません。

③ 伝わったかどうかを確かめる

説明が終わったとき、
「分かりにくいところは
ありませんでしたか?」

と尋ねる方法もあります。

伝わっていなければ、
違う言葉で説明してみる。

一度で完璧に話すことよりも、
相手と理解を確かめ合うことを
大切にしたいと思います。

人は気づくことで変わり始める

あの日、コンビニの喫煙所で
耳にした若者たちの会話。

彼らは、私に何かを
教えようとしたわけでは
ありません。

ただ普段どおりに、
会話をしていただけでしょう。

しかし、私にとっては、
忘れられない出来事になりました。

自分の話し方に問題があると
気づいたときは、
大きなショックを受けました。

人と話すことが怖くなり、
どうすればいいのかも
分かりませんでした。

それでも、人の言葉に耳を傾け、
自分の話し方を見直すことから
始めたのです。

そして、思いがけず
同僚との会話にも変化を
感じるようになりました。

もちろん、すべてが
自分の話し方による変化だったとは
言い切れません。

それでも、あの日の気づきが、
自分の言葉を見つめ直す
きっかけになったことは確かです。

もし今、あなたも誰かに
理解してもらえず悩んでいるなら、
一つだけ考えてみてください。

「自分の頭の中にある景色は、相手にも見えているだろうか?」

その小さな問いかけが、
これまでとは違う伝え方を
見つけるきっかけになるかもしれません。