「もう二度と繰り返さない」

そう決意したはずなのに、
気がつくと同じ失敗を
繰り返してしまう。

そんな経験はありませんか?

感情的になって
余計なことを言ってしまう。

やるべきことを後回しにして、
あとから後悔する。

自分でも分かっているのに、
なぜ変えられないのでしょうか。

実は、この疑問には
心理学が長年研究してきた
「習慣」という心の働きが
関係している場合があります。

今回は心理学の歴史から、
無意識と習慣の関係を
一緒に考えてみましょう。

なぜ分かっていても同じ失敗を繰り返すのか?

最初に知っておきたいのは、
私たちの行動すべてが
意識的な判断によって
決まるわけではないことです。

例えば、朝起きて
いつもの場所に座る。

何となくスマートフォンを
手に取ってしまう。

こうした行動をするとき、
毎回じっくり考えている
わけではありません。

過去に繰り返してきた行動が、
特定の状況をきっかけに
自然と現れることがあります。

心理学では、こうした働きを
習慣による自動的な行動
として研究しています。

もちろん、同じ失敗の原因が
すべて習慣とは限りません。

知識や経験が足りない場合も
あれば、疲労や周囲の環境が
影響することもあります。

しかし、習慣の仕組みを知ると
自分の行動を違う角度から
見つめられるかもしれません。

心理学者ウィリアム・ジェームズが考えた習慣

1890年、習慣に注目した心理学者

習慣について考えるために、
少し歴史を振り返ってみます。

1890年、アメリカの心理学者
ウィリアム・ジェームズは
『心理学原理』を出版しました。

その第4章の題名は
「習慣(Habit)」です。

ジェームズは、人間の生活には
多くの習慣が存在することに
注目していました。

そして、繰り返す行動が
身につくことを、
神経組織の変化する性質と
結びつけて考えました。

現在の脳科学とは
研究方法も知識も異なります。

それでも、習慣が人間の行動に
大きく関わっているという
視点は重要なものでした。

習慣は私たちを助けてもいる

もし毎日の行動を
一つずつ考えなければ
ならないとしたら、
どうなるでしょうか。

歯を磨く順番を考える。

靴を履く動作を考える。

慣れた道を歩くときにも
毎回判断する。

それでは日常生活だけで
大変な労力が必要になります。

習慣には、慣れた行動を
効率よく行えるようにする
大切な役割があります。

つまり、習慣そのものが
悪いわけではない
のです。

ただし、その便利な仕組みが
自分の望まない行動にも
働くことがあります。

現代心理学が明らかにした習慣の仕組み

行動を引き起こすのは意志だけではない

2007年、心理学者
ウェンディ・ウッドと
デイヴィッド・ニールは、
習慣についての研究を
発表しました。

彼らは、習慣が形成される
仕組みに注目しました。

繰り返し同じ状況で
同じ行動をしていると、
その状況と行動の間に
結びつきが生まれます。

そして、習慣が身につくと、
いつもの状況に置かれただけで
行動が引き起こされることが
あると説明しています。

例えば、仕事を終えて
家に帰ったとき。

疲れていると、
ついスマートフォンを開き、
長時間見てしまう。

この場合、帰宅という状況や
いつもの座る場所などが
行動のきっかけになっている
可能性があります。

本人は時間を有効に使いたいと
考えているかもしれません。

それでも、身についた習慣が
先に現れることがあるのです。

無意識と習慣は同じものなのか?

ここで、前の記事で学んだ
「無意識」を思い出して
みましょう。

無意識とは、広い意味では
本人が自覚していない
心の働きを指します。

一方、習慣は、繰り返しによって
身についた行動の傾向です。

習慣的な行動の中には、
意識的に判断しなくても
実行できるものがあります。

つまり、無意識と習慣は
関係していますが、
同じ意味ではありません。

習慣は、意識しなくても
行動が進む仕組みの
一つとして理解できます。

なぜ反省しただけでは変わらないのか?

失敗すると、私たちは
反省することがあります。

「次こそ気をつけよう」

その気持ちは、
決して無意味ではありません。

しかし、反省するだけで
身についた習慣がすぐに
消えるとは限らないのです。

なぜなら、これまでと
同じ状況が続いていれば、
同じ行動が再び現れる
可能性があるからです。

例えば、夜更かしを
やめようと決意しても、
毎晩ベッドの横に
スマートフォンがあれば、
以前と同じ行動を
始めてしまうかもしれません。

ここから考えられるのは、
意志の強さだけでなく、
行動を始めるきっかけにも
目を向ける必要がある

ということです。

習慣は何歳からでも変えられるのか?

2010年に発表された研究では、
96人の参加者が
食事や運動などの行動を
習慣にする過程が調べられました。

研究では、同じ状況で
行動を繰り返すことで、
その行動の自動性が
高まる様子が確認されました。

ただし、習慣が身につくまでの
時間には大きな個人差が
見られました。

また、一度実行できなかった
からといって、それまでの
積み重ねが台無しになる
わけではないことも
示唆されています。

この研究は、年齢に関係なく
誰でも同じように変われると
証明したものではありません。

それでも、習慣が
繰り返しによって形成される
という事実は、
行動を見直すための
大切な手がかりになります。

同じ失敗を繰り返さないためにできる3つのこと

ここまで学んだ心理学を、
日常生活に当てはめて
考えてみましょう。

① 失敗した直前の状況を振り返る

最初から自分を変えようと
する必要はありません。

まずは、同じ失敗をしたとき、
その直前に何があったのかを
思い出してみましょう。

疲れていたのか。

焦っていたのか。

いつも同じ場所や時間に
起きていたのか。

原因を決めつけるのではなく、
行動のきっかけを探します。

② いつもの行動を少しだけ変える

例えば、夜更かしが
気になるのであれば、
就寝前のスマートフォンの
置き場所を変えてみる。

人との会話で
余計な一言が出るなら、
返事をする前に
一度だけ間を置いてみる。

大切なのは、
一度にすべてを
変えようとしないことです。

これまでの習慣を
別の行動に置き換えられないか、
小さく試してみましょう。

③ できなかった日も振り返る

習慣を変えようとしても、
以前と同じ行動に
戻ることがあるでしょう。

そんなときは、
自分を責める前に
一つ考えてみてください。

「何がきっかけだったのか?」

失敗を性格の問題として
終わらせるのではなく、
次の行動を考える材料にする。

それも、自分を理解する
一つの方法ではないでしょうか。

まとめ|失敗の繰り返しから自分を知る

今回は、同じ失敗を
繰り返してしまう理由を
心理学の歴史から
考えてきました。

1890年、ジェームズは
習慣が人間の生活に
深く関わっていることを
論じました。

そして現代心理学では、
繰り返した行動が
周囲の状況と結びつき、
自動的に現れる仕組みが
研究されています。

同じ失敗を繰り返す理由は
一つではありません。

だからこそ、すべてを
意志の弱さのせいにする
必要もないのです。

最後に一つ、
考えてみてください。

あなたが繰り返している
行動の直前には、
いつも何が起きていますか?

その小さな気づきが、
これまでとは違う行動を
選ぶきっかけになる
かもしれません。

参考資料

ウィリアム・ジェームズ『心理学原理』(1890年)第4章「習慣」。心理学史の原典です。

Wood & Neal(2007)『A New Look at Habits and the Habit–Goal Interface』。状況と行動の結びつきによる習慣形成を説明した研究です。

Wood & Rünger(2016)『Psychology of Habit』。習慣の自動性と意識的な目標との関係をまとめた総説です。

Lallyほか(2010)『How are habits formed: Modelling habit formation in the real world』。日常行動の習慣化を調べた研究です。