「次こそ当たるかもしれない」
そう思って、結果を
期待したことはありませんか?
当たるか、外れるか。
結果が分からないからこそ、
期待する気持ちが生まれます。
しかし、その期待には、
どれくらい数学的な
根拠があるのでしょうか。
実は今から約370年前、
賭け事をめぐる疑問に、
数学で答えを出そうとした
二人の人物がいました。
フランスの数学者、
パスカルとフェルマーです。
今回は、二人が考えた問題から、
現代のパチンコの確率まで、
一緒に学んでみましょう。
数学が苦手な方でも、計算の意味が分かるように、一つずつ説明していきます。
約370年前、賭け事が数学の研究につながった
1654年、フランスの数学者
ブレーズ・パスカルと
ピエール・ド・フェルマーは、
手紙を通して賭け事の
問題を議論していました。
その中に、
「分配問題」と呼ばれる
有名な問題があります。
勝負が途中で終わったとき、
賞金をどう分ければ
公平なのかという問題です。
これは単純なようで、
実は難しい問題でした。
なぜなら、まだ起きていない
勝負の結果まで考える
必要があったからです。
賞金1万円をどう分ける?
ここで、簡単な例を
考えてみましょう。
AさんとBさんが、
先に3勝した方が優勝する
ゲームをしています。
1回ごとの勝つ確率は、
どちらも50%です。
現在の成績は、
- Aさん:2勝
- Bさん:1勝
このとき、事情があって
ゲームを中断することに
なりました。
賞金は1万円です。
さて、二人にはいくらずつ
分ければよいのでしょうか。
「2勝対1勝だから、
2対1で分ければいい」
そう考える人も
いるかもしれません。
しかし、数学では
別の答えが出てきます。
パスカルの考え方を使って計算してみよう
まず、今後の勝負を
考えてみましょう。
Aさんは、あと1勝すれば優勝。
Bさんは、あと2勝しなければ
優勝できません。
① Aさんが次の勝負で勝つ確率
Aさんが次の勝負で勝てば、
その時点で優勝です。
勝つ確率は50%なので、
Aさんが次に優勝する確率
=50%
となります。
② Bさんが勝った場合は?
次の勝負でBさんが勝つと、
二人とも2勝になります。
その次の勝負では、
どちらにも優勝する
可能性があります。
Bさんが勝った後、
Aさんが勝つ確率は、
50% × 50% = 25%
です。
つまり、Aさんには、
優勝する道筋が二つあります。
- 次の勝負で勝つ:50%
- Bさんが勝った後に勝つ:25%
これらを足すと、
50% + 25% = 75%
Aさんの優勝確率は
75%になります。
一方、Bさんが優勝するには、
2回連続で勝つ必要があります。
50% × 50% = 25%
したがって、Bさんの
優勝確率は25%です。
③ 賞金1万円を分ける
それぞれの優勝確率に
合わせて賞金を分けるなら、
Aさん:
10,000円 × 75%
= 7,500円
Bさん:
10,000円 × 25%
= 2,500円
という答えになります。
つまり、賞金は
3対1で分けるということです。
ここで大切なのは、
これまで何回勝ったかだけでなく、
これから勝つ可能性を
考えていることです。
こうした賭け事の研究が、
現代の確率論の発展に
大きく貢献しました。
ただし、パスカルたち以前にも、
確率に関係する研究は
行われていました。
確率とは、そもそも何だろう?
ここで、確率について
少し整理しましょう。
確率とは、ある出来事が
どれくらいの割合で起こるかを
数字で表したものです。
例えば、公平なコインには
表と裏があります。
表が出る確率は、
1 ÷ 2 = 0.5
百分率に直すと、
0.5 × 100 = 50%
となります。
ここで覚えておきたいのは、
50%だからといって、2回投げれば必ず1回表が出るわけではないということです。
2回とも表が出ることも、
2回とも裏が出ることも
あります。
確率は、次の結果を
保証する数字ではありません。
では、現代のパチンコでは
どうなるのでしょうか。
大当たり確率1/399のパチンコを考える
ここからは、実際の
パチンコを例に考えます。
次の条件を使います。
- 1,000円で250玉を借りる
- 1,000円で18回転する
- 大当たり確率は1/399
なお、今回は計算を
分かりやすくするため、
毎回1/399の確率で独立して
抽選されると仮定します。
① 399回転させるには何円必要?
まず、1,000円で
18回転するとします。
399回転させる費用は、
399 ÷ 18 × 1,000
= 約22,167円
です。
この計算では、1回転あたりの
費用が一定だと仮定しています。
また、初めて当たるまでの
理論上の平均回転数も、
この条件では399回です。
しかし、ここには
大きな落とし穴があります。
約22,167円を使えば必ず当たる、という意味ではありません。
平均という数字と、
実際に当たるまでの回転数は
同じではないのです。
399回転しても当たらない確率は?
ここが今回の記事で、
特に知ってほしい部分です。
1/399の台を399回転させたとき、
少なくとも1回当たる確率は
何%なのでしょうか。
一つずつ計算してみましょう。
① 1回転で外れる確率
大当たり確率が1/399なら、
外れる確率は398/399です。
計算式は、
399 − 1 = 398
つまり、
1回転で外れる確率
=398 ÷ 399
となります。
② 2回続けて外れる確率
次に、2回連続で
外れる確率を考えます。
独立した抽選では、
両方とも外れる確率は
掛け算で求めます。
398/399 × 398/399
約99.5%です。
2回とも外れる可能性が
非常に高いことが分かります。
③ 399回連続で外れる確率
それでは、399回続けて
外れる場合はどうでしょうか。
先ほどの398/399を、
399回掛けます。
計算式は、
(398 ÷ 399) の399乗
です。
「399乗」とは、
同じ数字を399回掛ける
という意味です。
電卓で計算すると、
約0.3674
つまり、
約36.7%
という答えになります。
驚くかもしれませんが、
399回転しても、
約36.7%の確率で
一度も当たらないのです。
④ 1回以上当たる確率を求める
ここまで分かれば、
当たる確率も求められます。
100%から、
一度も当たらない確率を
引けばよいのです。
100% − 36.7%
= 63.3%
つまり、399回転までに
少なくとも1回当たる確率は、
約63.3%になります。
399回転すれば必ず当たると
考えていた人には、
意外な数字かもしれません。
これが、数学で考えた
確率の世界です。
500回転外れたら、次は当たりやすくなる?
ここで、もう一つ
重要な問題があります。
500回転しても、
一度も当たらなかった。
そんなとき、
「ここまで外れたのだから、
そろそろ当たるはずだ」
と考えることが
あるかもしれません。
しかし、毎回の抽選が
独立しているなら、
501回転目の当たり確率も
1/399のままです。
過去の外れを、
次の抽選が覚えている
わけではありません。
ただし、実際の遊技機には、
状態によって確率が変わる
仕組みもあります。
今回の話は、あくまで
毎回同じ確率で抽選する
場合の数学です。
たくさん外れたことだけを根拠に、次が当たりやすくなるとは言えない。
この違いを知ることが、
確率を学ぶ第一歩です。
大当たり確率と期待値は何が違う?
次に、期待値について
考えてみましょう。
期待値とは、起こり得る結果と
その確率から求める、
平均的な値のことです。
少し難しく感じるかも
しれません。
そこで、先ほどの
パチンコの条件を使います。
① 1回転にかかる費用
1,000円で18回転するなら、
1,000 ÷ 18
= 約55.56円
1回転あたり、
約55.56円かかる計算です。
② 1回転で得られる価値の期待値
ここで仮に、
大当たり1回で得られる
平均的な価値を、
20,000円とします。
これは計算を学ぶための
仮の数字です。
実在するパチンコ台の
出玉を表している
わけではありません。
1/399で当たり、
当たったときに平均20,000円の
価値が得られるなら、
20,000 ÷ 399
= 約50.13円
これが1回転あたりに
得られる価値の期待値です。
③ 費用を差し引く
1回転で得られる
価値の期待値は50.13円。
しかし、回すためには
55.56円かかります。
そこで、
50.13 − 55.56
= 約マイナス5.43円
という答えになります。
この仮定では、
1回転あたりの期待収支が
マイナスになる計算です。
ただし、実際のパチンコでは、
連チャン、出玉の振り分け、
交換率、遊技中の玉の戻りなど、
さまざまな条件が関わります。
したがって、この計算だけで
実際の機種の期待収支を
判断することはできません。
また、1,000円で18回転すれば
必ず利益が出るわけでも
ありません。
ここで理解してほしいのは、
当たる確率と、お金が増えるかどうかは別の問題
だということです。
大きく勝った記憶と数学の違い
私は以前、長い間、
パチンコやスロットに
のめり込んでいました。
その中でも、特に
記憶に残っているのは、
連チャンして大きく
勝ったときのことです。
そして、その経験から、
「またあんなふうに
勝てるかもしれない」と期待し、
再び店に向かったことも
何度もありました。
しかし、今回学んだ数学を
振り返ると、ある疑問が
浮かんできます。
過去に大きく勝ったことは、
次も勝てるという
証拠になるのでしょうか。
もちろん、過去の経験から
期待を抱くこと自体は、
不自然なことではありません。
ただし、強く印象に残った
勝利の記憶と、
実際の収支や確率は
区別する必要があります。
記憶に残る成功と、現実の数字は必ずしも一致しない。
これはギャンブルに限らず、
仕事や生活の判断にも
関係する問いだと思います。
数学を知ることは、自分の判断を見直すこと
確率を理解したからといって、
未来の結果を正確に
予測できるわけではありません。
また、数学の知識だけで、
ギャンブル依存症が
解決するわけでもありません。
依存症には、本人の意思だけでは
コントロールしにくい
問題が関わることがあります。
生活やお金、人間関係に
影響が出ている場合は、
専門的な支援を求めることも
大切な選択肢です。
だからこそ、私は数学を、
誰かを批判するためではなく、
自分自身の判断を
見直すために学びたいのです。
約370年前、パスカルと
フェルマーが考えたのは、
不確かな結果をどう
数字で表すかという問題でした。
そして現在の私たちも、
その数学を使って
自分の期待を考えることが
できます。
399分の1という数字を
知っていることと、
その意味を理解していることは
同じではありません。
数学が教えてくれるのは、未来の結果そのものではなく、自分の期待を確かめるための考え方なのかもしれません。
もし今日、一つだけ
自分に問いかけるなら、
「私は何を根拠に、
次もうまくいくと思っているのか?」
そんな問いが、
これからの判断を見つめ直す
きっかけになればうれしいです。
参考資料